診断の考え方
プロのオステオパシー施術者が、最初に見ているのは「症状」ではありません。
肩が痛い、腰が重い、眠れない、疲れが取れない。
それらはすべて結果です。
私たちが見ているのは、
「この人の体は、どこで回復を止めてしまっているのか」
という一点です。
体は本来、壊れにくく、治りやすくできています。転んでも治り、風邪をひいても回復し、疲れても眠れば戻る。その力が働いていないとき、必ずどこかで流れが止まっています。流れとは、血液であり、リンパであり、神経であり、呼吸であり、内臓の動きであり、頭蓋の微細なリズムです。
臨床ではまず、「どこが一番苦しんでいるか」ではなく、
「どこが一番、動けなくなっているか」を感じ取ります。
たとえば腰が痛い人でも、腰には触れないことがあります。呼吸が浅く、横隔膜が固まり、内臓が下から引っ張られていれば、腰は結果として頑張らされているだけだからです。その場合、腰を治そうとするほど、体は混乱します。
プロの施術者は、体に問いかけます。
「今、どこに触れたら、全体が一番楽になるか?」
その答えは、人によって毎回違います。
ある日は頭蓋。
ある日は肝臓。
ある日は骨盤。
ある日は、何もしないことさえあります。
これが技術ではなく、臨床思考です。
統合的なオステオパシーでは、順番があります。
まず、安全かどうか。
体が「守らなければならない」と感じている状態では、どんな治療も入っていきません。だから最初は、神経系、とくに自律神経が落ち着く場所を探します。多くの場合、それは呼吸と頭蓋、あるいは内臓の深部です。
その次に、構造です。
筋骨格の調整は最初になることが多い。なぜなら、液体の流れと神経が整えるには、流れるための道が必要だからです。構造を整えれば液体や神経は自分で戻ろうとするからです。
次に、循環です。
血液とリンパが動かなければ、修復材料が届きません。ここで内臓や横隔膜、胸郭が重要になります。
この順番を無視すると、「その場では良いが戻る施術」になります。順番を守ると、「何もしていないのに、体が変わり続ける」状態になります。
優れたオステオパシー施術を受けた人がよく言う言葉があります。
「痛みより先に、安心感が来た」
「体の中が静かになった」
「考えなくても呼吸できるようになった」
これは成功のサインです。体が主導権を取り戻した証拠です。
逆に、施術者が頑張りすぎていると、体は依存します。
「またすぐ来ないとダメですよ」
「ここはまだ悪いです」
こうした言葉が増えるほど、体の自律性は弱まります。
最高のオステオパシーとは、施術者がいなくても、体が回復を続ける状態を作ること。
最後に、オステオパシーの核心を一文で表します。
オステオパシーとは、体を治す技術ではなく、体が治るのを邪魔しているものを見つけ、静かに外す医学である。
だから派手ではありません。
でも、深く、長く、人生に効きます。












